2014年12月29日月曜日

コミックマーケット87の移動基地局車のアクセス回線を探る

■はじめに

 コミックマーケット87のトラヒック対策で出動している各社の移動基地局車から、コアネットワークに向かうアクセス回線を現地で調査してきましたので報告します。過去2回の調査(C85調査結果C86調査結果)とも異なった結果となっています。

■全体概要


 移動基地局車は、NTTドコモ3台、KDDI3台、UQコミュニケーションズ2台、ソフトバンクモバイル5台が出動していました。出動場所は、東地区待機列となる駐車場、コスプレ広場となる西駐車場など、人が集中する屋外を中心に対策が行われました。
 また今回は、AXGPやWiMAX2+に対応したiPhone6の発売後、初のコミケということで、2.5GHz対策も積極的に行われました。

■NTTドコモ

 東地区の2台の移動基地局車のアクセス回線は、NTT東日本の光ファイバでした。東京電力柱に取り付けられたNTT東日本クロージャより2本の光ケーブルが出ており、柵沿いに敷設されたケーブルはドコモの移動基地局車に引き込まれています。南側の移動基地局車に近づくことができなかったため、光ケーブルが引き込まれている部分は確認できませんでしたが、無線アクセス等のアンテナが無いことから、アクセス回線は光回線であることが推測できます。
 今回より、移動基地局車にWi-Fiアンテナは設置されていません。

▲NTT東日本クロージャが取り付けられている東京電力柱

▲NTT東日本クロージャ。右側が移動基地局車側。光ケーブルが2本出ている

▲東地区北側移動基地局車に引き込まれる光ケーブル1本

▲東地区北側の移動基地局車。光ケーブルが1本引きこまれている

▲東地区南側の移動基地局車

 西地区は艦これラッピング車です。アクセス回線は光回線です。ビッグサイト内DW102電話交換室から出ている光ケーブルが、移動基地局車まで敷設されています。
 こちらも、Wi-Fiアンテナは設置されなくなりました。

▲西地区移動基地局車

▲DW102電話交換室から出てている光ケーブル2本。1本はKDDI、もう1本はドコモ・UQ向け

■KDDIグループ

 東地区北側の移動基地局車のアクセス回線は、KDDI自前の光回線です。ドコモと同じ東京電力柱のクロージャから移動基地局車まで、KDDIの光ケーブルが敷設されていました。東地区2台の移動基地局車は、お馴染みの光無線 CANOBEAM DT-130で接続され、南側の移動基地局車で拾ったトラヒックは北側の移動基地局車へ流しています。UQは最寄りのKDDI移動基地局車からアクセス回線を提供されています。
 東地区南側にUQの移動基地局車が出るのは初めてのことです。WiMAX2+端末が普及してきた影響でしょう。

▲上側がKDDIクロージャ。東地区北側KDDI移動基地局車まで光ケーブルが敷設されている

▲東地区北側のKDDI移動基地局車。Wi-Fiあり。南側移動基地局車向けのCanobeamも搭載。正方形の5GHzエントランスアンテナは未使用

▲東地区北側のUQ移動基地局車

▲東地区南側のKDDI移動基地局車、UQ移動基地局車。Wi-Fiも吹いている。

 西地区はデュラララ!!ラッピングのKDDI移動基地局車です。KDDI、UQ共に、ドコモと同じく、DW102電話交換室から移動基地局車まで光ケーブルが敷設されています。

▲西地区のデュラララ!!移動基地局車。Wi-Fiも吹いている。APは、ZoneFlex 7762-S

▲西地区のUQ移動基地局車。下側のアンテナでauWi-Fiも吹いている

■ソフトバンクグループ

 ソフトバンクグループは今回より、他社とは全く違う試みを始めました。5台の移動基地局車、全てのアクセス回線が、26GHzエントランス無線となり、ビッグサイト周辺3箇所のソフトバンク基地局へトラヒックを流しています。ITMediaの記事によると、26GHzエントランス無線の免許はソフトバンクテレコムのものとのことです。ソフトバンクテレコムからソフトバンクモバイルへ伝送路を販売したということです。エントランス無線は、8対向、計16台も使用されました。
 4台の移動基地局車には初めてWCPのアンテナも設置されました。iPhone6発売の影響でしょう。

▲26GHzエントランスは、日本無線製 NTG-525JSL

 東地区には3台の移動基地局車があり、26GHzアンテナがそれぞれ2台づつ付いていました。受信点であるベンツ有明ビル屋上には、6つの26GHzアンテナが設置されています。本来であれば移動基地局車にそれぞれ1台づつアンテナが設置されているはずですが、2台になっている理由としては、1対向の最大伝送速度180Mbpsでは帯域が不足するため、2対向にすることで、移動基地局車1台あたり、360Mbpsの帯域を確保しているのではないかと推測します(エントランス無線が日本無線の25GHzエントランス無線仕様と同様だと仮定)。ITMediaの記事によると、1台の移動基地局車から、LTEとしては、ソフトバンクモバイルの2GHzだけでなく、ワイモバイルの1.7GHz、WCPの2.5GHzも吹いているため、光回線並の帯域が求められるのでしょう。

▲東地区南側の移動基地局車2台。26GHzアンテナが各2台

▲東地区北側の移動基地局車

▲東地区3台の移動基地局車の受信点。26GHzアンテナは6つ

 水上バス乗り場にも移動基地局車がありました。こちらは2.5GHzは吹いていませんでした。26GHzエントランス無線の受信点は、35mm換算330mmレンズのカメラでも探すことができませんでした。アンテナが向いている有明10号地ふ頭を歩き回ると、東京港フェリーターミナル屋上で受信点を発見しました。

▲水上バス乗り場の移動基地局車。26GHzアンテナ。そふとばんくてれこむかにゅうかんとう823

▲水上バス乗り場から、26GHzアンテナが向く方を眺める。赤丸が受信点

▲東京港フェリーターミナル屋上のソフトバンク基地局。水上バス乗り場の移動基地局車受信用の26GHzアンテナも

 西地区は、ソフトバンク初のラッピング移動基地局車です。前回同様、受信点は、SBグループ全部載せ鉄塔頭頂に設置されています。

▲西地区の移動基地局車。2GHz/1.7GHz、900MHz、2.5GHz、26GHz、GPSのアンテナが並ぶ姿は圧巻

▲西地区の移動基地局車の26GHzアンテナ。そふとばんくてれこむかにゅうかんとう825

▲SBグループ全部載せ鉄塔。天頂には、西地区の移動基地局車の受信アンテナ

■おわりに

 徒歩で極寒の中、受信点を探して港湾を歩くのは辛かった…

2014年8月17日日曜日

コミックマーケット86の移動基地局車のアクセス回線を探る

はじめに

 コミックマーケット86のトラヒック対策で出動している各社の移動基地局車から、コアネットワークに向かうアクセス回線を現地で調査してきましたので報告します。C85と変わっている部分もあり、要注目です。

全体概要

 移動基地局車の台数は、ドコモ2台、KDDI3台、ソフトバンク5台、UQ2台でした。ドコモはC85と比べると1台減りました。
 前回も述べましたが、移動基地局車の出動台数が多ければよいという話ではありません。常設の基地局を増やすことでトラヒック対策が行えるのであれば、移動基地局車など不要だからです。
 現に、ビッグサイトで発生するトラヒックを捌くために設置されている基地局は年々増えています。C85では、東西の間に建てられたSBグループの全部載せ鉄塔が話題になりました。また今回のC86でも、東123ホールの屋外待機列をカバーできる場所に、2局のKDDIコン柱基地局が新設されました。
 基地局新設、既設基地局のパラメータ変更など、目立たないところで様々なソリューションによってトラヒック対策は行われています。本記事で扱う移動基地局車は、その一部に過ぎないことはお忘れないよう。


東地区

 ドコモの移動基地局車からは光ファイバが出ており、その光ファイバはNTT東日本のクロージャへ入っていきました。NTT東日本の加入者光ファイバのようですので、行き先はNTT局舎です。
 北側のKDDIの移動基地局車からは光ファイバが出ており、その光ファイバはKDDIのクロージャへ入って行きました。KDDIの加入者光ファイバのようです。また、UQとKDDIの移動基地局車同士は接続されており、アクセス回線はKDDIとUQで共有しているようです。
 KDDIの2台の移動基地局車にはCANOBEAM DT-130が搭載されており、南側の移動基地局車は北側の移動基地局車へ、CANOBEAMを通してトラヒックを流していました。KDDIがCANOBEAMを使用するシーンは初めて見ました。
 ソフトバンクの移動基地局車は3台ありましたが、全てにCANOBEAM DT-120が搭載されており、近隣のビルの屋上にあるCANOBEAMへトラヒックを流していました。
 KDDI、ソフトバンクの南側の移動基地局車がそろってCANOBEAMを使用する様は、圧巻です。


▲ドコモ移動基地局車

▲KDDI北側移動基地局車

▲UQ移動基地局車

▲KDDIクロージャ

▲ソフトバンク北側移動基地局車

▲ソフトバンクCANOBEAM受信点

▲KDDI、ソフトバンク移動基地局車

西地区

 水上バス乗り場のソフトバンク移動基地局車からは光ファイバが出ており、すぐ近くにあるNTT東日本クロージャーに接続されていました。NTT東日本の加入者光ファイバのようなので、NTT局舎まで続いてそうです。
 西駐車場のドコモ、KDDI、UQの移動基地局車からは光ファイバが出ており、西展示場のDW102電話交換室内まで接続されていました。
 西駐車場のソフトバンク移動基地局車には26GHzアンテナが設置されており、東西の間にあるSBグループ全部載せ鉄塔の頂上に向けてエントランス無線でトラヒックを流していました。鉄塔の頂上にも臨時で26GHzアンテナが設置されていました。


▲ドコモ移動基地局車

▲KDDI移動基地局車

▲UQ移動基地局車

▲DW102電話交換室に入ってゆく光ファイバ

▲ソフトバンク移動基地局車

▲ソフトバンク26GHzエントランス無線アンテナ(移動基地局車)

▲ソフトバンク26GHzエントランス無線アンテナ(鉄塔)

▲水上バス乗り場側ソフトバンク移動基地局車

▲NTT東日本クロージャ

おわりに

 CANOBEAMをKDDIまで使い始めたので、事業者間で光無線の運用調整が必要になる時期も近いのでは?ソフトバンクは光無線、エントランス無線など、無線設備を多用することでEnd-Endを自前設備に切り替える傾向にある?ドコモは他社に比べると移動基地局車が少ないが、よっぽど近隣の基地局が充実しているのか?なんてことを考えました。
 ドコモとKDDIは移動基地局車のラッピング、Twitterでの広報活動、企業ブース出展など、コミケ参加者に到達度の高いアピールができていました。アーリーアダプターが多く参加するイベントですので、存在感を出すことで効果が出ると判断されたのでしょう。一方、ソフトバンクは「つながる電波届けに来たぞ!」などと通信事業者として当然のことをわざわざラッピングするだけ。痛々しい。ドコモ、KDDIに比べると、ソフトバンクの存在感は圧倒的に出遅れているでしょう。せっかくSBクリエィティブがグループ内にあるのですから、グループが保有するコンテンツを活かした活動をしてほしいものです。